火力発電所における問題点
日本は、発電の80%以上火力発電に頼っています。
再生可能な自然エネルギーと比較すると、安定した電力を供給することができるというメリットが火力発電にはあります。
また、需要に応じて必要な量だけの電力を調整して供給することが可能なため、余剰電力を作る必要がなく、無駄がありません。
さらに、水力発電所や原子力発電所のような広大な敷地を必要とせず、安いコストで発電できるのが火力発電のメリットです。
ところが、火力発電には大気汚染という大きなデメリットがあります。
二酸化炭素を排出して、地球温暖化を促進するだけではなく、燃料の種類によっては窒素酸化物や硫黄酸化物なども排出して大気汚染の原因となります。
しかも、火力発電の原料となる化石燃料はいずれは枯渇してしまいますし、石油に関しては輸入品がほとんどのため、国際情勢が大きく影響し、安定した供給を確保するのが難しいと言う問題点があります。
火力発電所の大気汚染防止対策
各火力発電所では、大気汚染を防止するためにさまざまな防止対策を講じています。
火力発電所から排出されるガスには煤塵や硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)などといった大気汚染物質が含まれていますので、そのまま排出されるのを防ぐために排煙脱硫装置や排煙脱硝装置などを設置しています。
酸性雨の原因ともなる硫黄酸化物は、排煙脱硫装置によって石灰石を溶かした水と接触吸収させることによって除去を行います。
排煙脱硝装置では、触媒とアンモニアによって窒素酸化物を除去します。
さらに低NOxバーナ(二段燃焼方式と排ガス混合方式)によって、NOxの排出を有意に減らします。
これだけではなく、防音対策・振動対策も講じている他、発電所の敷地周辺には地域の気候風土に合わせて植樹を行い、緑化対策にも貢献しています。
熱効率の向上によるメリット
火力発電所というのは、熱効率が向上すればするほど燃費消費量が少なくなるので、CO2排出量を抑えることができます。
具体的には、熱効率が1%向上することによって年間約55万トンのCO2排出量を削減し、18万キロリットルの燃料を節約できる計算になります。
熱効率を向上させるために、大崎発電所では加圧流動床複合発電、柳井発電所ではLNGコンバインドサイクル発電、そして三隅発電所では超々臨界圧発電を採用しています。
火力発電所から出る石炭灰の活用も大きな課題で、中国電力の火力発電所から出る石炭灰の70%は、セメント原料などとして有効に活用されています。
新素材コンクリート「NA(ネオアッシュ)クリート」や地盤改良材の「Geo Seed(ジオシード)」、石炭灰吹付コンクリート「EPショット」などが実際の実用例です。