特定有害物質
土壌汚染を引き起こす物質は、平成22年に施行された土壌汚染対策法で特定有害物質に指定されている25種類の物質です。
これらは、人体に健康被害を与える恐れが高く、且つ、汚染された土壌から直接口に入ってしまう「直接摂取によるリスク」と、土壌汚染が原因で汚染されてしまった地下水を飲むことで体内に有害物質が入ってしまう「地下水等の摂取によるリスク」がある物質が選定されています。
これらの物質が土壌から検出されたら、必ず土壌汚染と認定されるのかというと、そうではなく、土壌汚染対策法ではそ基準値が定められており、その基準値を下回る場合は、土壌汚染と認定されません。
特定有害物質の基準値は、「直接摂取によるリスク」において9種類の物質、「地下水等の摂取によるリスク」においては25種類の物質に設定されています。
揮発性有機化合物
揮発性有機化合物は、第一種特定有害物質として定められている有害物質です。
この物質は、気体になりやすいという性質を持っていて、土壌にも気体として存在し、大気汚染を引き起こす可能性があります。
揮発性化合物の特定有害物質は、全部で11個の物質が選定されており、ベンゼンやトリクロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロメタンなどがあり、それぞれに基準値が指定されていますが、「直接摂取によるリスク」はないため、土壌含有量基準は指定されていません。
重金属等
重金属等は、第2種特定有害物質と定められている有害物質です。
これには鉛や水銀、シアン化合物、セレン、フッ素、カドミウムなど9つの物質が定められていて、それぞれに「直接摂取によるリスク」と「地下水等の摂取によるリスク」の基準値が指定されています。
水銀は日本三大公害の1つ、水俣病の原因となった有害物質で、正確には塩化メチル水銀という種類の水銀です。
また、シアン化合物は、別名を青酸といい、猛毒で知られている青酸カリは、シアン化カリウムのことです。
「地下水等の摂取によるリスク」の基準値である土壌含有基準が指定されているのは、この重金属等の有害物質のみですが、これらは地下水に溶けたり、沈泥として存在していることが多いためです。
農薬等
農薬等は、第3種特定有害物質に定められている有害物質です。
シマジン、チラウム、チオベンカルブ、PCB、有機りん化合物の5つの物質が定められています。
それぞれに「直接摂取によるリスク」における基準値が指定されていますが、PCBと有機りん化合物は検出されないことが基準となっています。
それは、これらは深刻な健康被害をもたらす可能性が高いからです。
PCBは体内に容易に入り、しかも長期間にわたって残留します。
主に脂肪組織に蓄積し、慢性的な皮膚障害や内臓障害を引き起こす可能性がある他、発がん性も高いと言われています。
また、有機りん化合物は、今では農薬にも使用されていませんが、殺虫剤の原料にもなる猛毒です。
日本では毒物及び特定毒物に指定されているほどです。
そのために土壌に検出されないことが基準値として指定されているわけです。