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灌漑事業による塩類集積・塩害の歴史

灌漑が塩害が引き起こすメカニズムとは?

塩害とは、田畑に塩分が入り込むことによって農作物ができなくなる問題のことです。
塩類が土地に集積されると多くの植物は浸透圧の関係から、根からの水分吸収ができなくなってしまいます。
土壌から水を得られないだけでなく、植物自体に含まれている塩分が土壌の方に移動してしまうこともあります。
そうなると、当然植物は枯れて収穫を期待することはできなくなるのです。

こうした塩害が生じる原因はいくつかあるのですが、人の行動によって起きることがあります。
その代表的な例が灌漑事業です。
灌漑というのは、川や湖から水路によって畑に水を引いたり、ポンプなどで水を運搬したりして畑に十分な水を供給することです。
灌漑によって塩害が生じる理由としては、下流域の場合、潮の満ち引きの関係で海の水が川に逆流し、それが畑に流入することで塩類が蓄積されてしまうことを挙げられます。

もう一つの理由は、もともと土壌に含まれていた塩分が入るというものです。
川の上流付近の土地に塩類を含んだ地域があり、その土砂が川に流れていきます。
すると、下の方で川の水を引き込んだ畑に土砂由来の塩類が集積されて塩害が発生するというわけです。
特に上流域の森林を伐採することによって、木々の根が防いでいた土壌の流出が一気に始まると川に入り込む塩分濃度も高くなってしまいます。

灌漑による塩類集積に悩まされた過去の文明から学ぶ

過去の文明を研究すると、多くの文明発達地において灌漑がなされていたことが分かっています。
その技術とアイディアのおかげで、広大な畑を開拓し安定した食料供給ができるようになっていたのです。
しかし、上記のようなメカニズムで灌漑による塩類集積が進むと、今まで豊かに作物を供給してきた土地が痩せてきます。
そうすると、農耕によって支えられてきた文明が衰退することになり、徐々に他の土地への移住や都市の衰退につながっていったのです。

こうした歴史をたどった文明はインダス文明やシュメール文明など、いくつかの土地で起こったと考えられています。
もちろん塩害だけが直接の原因ではなく、都市化が進むにつれて森林伐採が盛んに行われたことなど、都市生活に伴う様々な環境負荷の増大も関係していると考えられます。

このように、古代であっても環境のことを考えずに都市化を進めることで、かえって人々の生活や経済活動にダメージを与えてしまったケースは起こっていたようです。
現代になってどんな行動が環境破壊につながるか、科学的に研究できるようになっていますので、過去の文明から学び現代人としての生活を行いながらも環境に優しい取り組みをしていく方法を見つけることが大事です。