コイの生態
池の中を優雅に泳ぎ回るコイは、日本の文化を象徴する風物詩とも言えます。
体長は60〜100cm、雑食性で、水草や貝類の他に小魚やカエル、他の魚の卵など、何でも食べるのが特徴です。
水面に落ちたパンやカステラ、昆虫など、口に入るものは何でも食べてしまいます。
コイの原産地は中央アジアで、日本でも1600万年前の第3紀層からコイの化石が見つかっており、非常に古くから分布していたことが確認されています。
コイの語源については諸説ありますが、景行天皇の「景行紀」には、景行天皇が絶世の美女の関心を引くために泳の宮の池に鯉を放したことから、その魚を「コヒ(恋)」と呼ぶようになったという記述があります。
景行天皇といえばヤマトタケルノミコトのお父さんと言われていますので、古くからコイが日本人の生活に浸透していたことがわかります。
コイは100年以上生きることも
コイの寿命は50年から60年で、魚の中では最も長生きする種のひとつです。
岐阜県の越原家では150年以上生きたコイが5匹以上もいたという記録が残っていますので、驚異的な長寿ということができます。
コイによる被害
姿が美しく、長寿のコイは、日本では昔からおめでたい魚として珍重されてきました。
「鯉の滝登り」という言葉があるように、立身出世の象徴としても知られています。
このようにいいことづくめのコイも、人間の安易な考えによって放流が行われることで、生態系破壊などの被害が出ています。
2017年5月2日、NPO法人「未来の荒川をつくる会」によって富士川水系の一つ、荒川の支流である貢川(くがわ)に300匹のニシキゴイが放流されました。
同法人が実施したニシキゴイの放流はこれが初めてではなく、今回が9回目でした。
ところが、ニシキゴイの放流は自然環境に大きな影響を及ぼしかねないのです。
コイは食欲が非常に旺盛で、川の在来魚の餌である水草の芽や貝類を全て食べ尽くしてしまいます。
さらに水底にある餌を探すために泥を巻き上げてしまうので、日光が遮られ、水草が枯れてしまうこともしばしばです。
天敵がいないこともコイの特徴で、寿命も長いため、いったん川に放流してしまうと長期間にわたって水中環境を破壊してしまうことにもなりかねません。
もう一つ無視できないのは、コイだけが罹るコイヘルペスウイルス(KHV)という感染症の蔓延です。
1990年代からコイヘルペスの問題が大きくクローズアップされており、日本でも大きな被害が報告されています。
コイヘルペスはニシキゴイとマゴイに特有の病気で、日本だけではなくてイギリスでもコイの大量死が発生し、問題になりました。
自然の生態系のバランスをむやみに崩すような行為は慎んだほうが無難なようです。