ハブとネズミの駆除に導入されたが駆除効果はなかった
ハブ対策として沖縄に導入されたマングースが、生態系を破壊しているとして問題になっています。
マングースはアフリカ大陸から東南アジアにかけて生息する哺乳綱食肉目の動物て、もともと日本には在来種はありませんでした。
1910年、動物学者の渡瀬庄三郎が、ハブとネズミを駆除する目的でガンジス川流域で捕獲したフイリマングースを沖縄に持ち込みました。
フイリマングースはテンやイタチなどに外観が似ており、サトウキビ農園を荒らしているハブとネズミを駆除することを目的に、沖縄に持ち帰られたのです。
ところが、猛毒を持っているハブにフイリマングースはなかなか近づかず、駆除の目的は果たせませんでした。
ヤンバルクイナなどを捕食
ガンジス川流域から連れてこられた17匹のフイリマングースは、ハブの代わりに捕まえやすい無害の動物を捕食し、どんどん増殖しています。
特にフイリマングースの餌食になったのはヤンバルクイナで、1985年から2005年にかけてのわずか20年間にヤンバルクイナが40%も減少してしまいました。
ヤンバルクイナは沖縄県北部(大宜味村・国頭村・東村)のやんばる地方だけに生息している、世界的にみても貴重な固有種です。
飛ぶことができないため、マングースの格好の餌食となってしまい、現在では飼育下繁殖が進められています。
ヤンバルクイナだけではなく、ハナサキガエルやオキナワキノボリトカゲ、ホントウアカヒゲなどといった絶滅危惧種もマングースによって存在が脅かされており、深刻な問題となっています。
現代は駆除される立場に
被害は沖縄本島だけにとどまらず、奄美大島でもアマミノクロウサギやケナガネズミなどといった希少種がマングースによって捕食されています。
ハブとネズミを駆除するために持ち込まれたマングースが、現代では駆除の対象になってしまいました。
やんばる地方でマングースの駆除が始まったの2000年のことで、2005年ぐらいからマングースの生息数が減少してきました。
とは言っても、1910年に導入された17匹のマングースが推定3万頭にまで増え、やんばる地方だけではなくて沖縄全島に広がったわけですから、完全に駆除するのはなかなか難しいと言えるでしょう。
沖縄南部にまで捕獲罠を設置するのはコスト面からいって難しいため、マングースが北上しないようにと柵も設置されています。
マングースを捕獲するための罠には絶滅危惧種であるケナガネズミなども掛かってしまうという問題も無視できません。
マングースが持ち込まれたのは沖縄だけではなく、カリブ海の島々やフロリダのドッジ島などでも沖縄と同様の問題が起こっています。
自然の生態系を尊重しながら作業を進めることは非常に大切です。